夏の読書感想文!『medium 霊媒探偵城塚翡翠』を読んで

風が吹けば桶屋がなんとやらとはよく言ったもので。

目下の世界的な流行り病のせいで、私も本を読む機会がめっきり減ってしまった。

 

例に違わず話せば長いのだが、手短にいこう。

もともと図書館派、気に入った本は買うといったスタイルで読書を楽しんできた。

 

しかし。

かの自粛期間で当然図書館は行けず、明けても足は遠のき、代わりに始めたのがインターネットの世界と図書の購入である。当然と言えば当然の成り行きかもしれない。

活字に飢えているものだからついつい買ってしまうのだが、ちょっと合わないなと感じる本もやはり多く、だんだんと購入頻度も控えめになってしまった。

 

先日、幸いなことに図書カードを頂く機会があり、また小説でも買ってみようかと久々に書店へ足を向けてみた。

 

気になっていた本を2冊ほど買ったのだが、

これが大当たりも大当たり。

 

購入した本に心から満足したのは久々かもしれない。

今回はこの本の話をしたいと思う。

 

 

 

と(カッコつけた)前置きが長くなりましたが!笑

今回は趣向を変えて、それに夏ですし(⁈)、読書感想文的なものを少し書きたいなと思います! 

※本ブログは小説をおすすめする「書評」ではなく、「感想」をメインとした「感想ブログ」という位置付けて書いております。そのため読了後に読むことを想定しており、内容に踏み込んだ記述があります。未読の方はご注意ください。

 

まあ自主的に読書感想文を書こうとは、私も成長したものですね。しみじみ。

 

というわけで

 

相沢沙呼

『medium 霊媒探偵城塚翡翠(講談社)

 

先日、読了いたしました~!

読書好きの知り合いから薦められたり(そして推しグルの最年長様が好きと公言していたり、中間さんが主人公可愛いって言っていたり、淳太くんが面白いって言っていたり)と、もとから気になっていた本ではあったのですが、先述の損気な性格(?)で購入には至っていなかった本作。

 

 

この間ぼーっとTLを眺めていたら、今秋から実写ドラマになるとのニュースが!

 

主演は清原果耶さんとのこと。落ち着いた印象のある女優さん。

主人公・翡翠ちゃんのキャラクターが無性に気になってしまいまして!

ここで買わずしていつ買うんだ?

今でしょ!(古っ)

 

というのが一連の経緯です。めちゃくちゃミーハーなんよ自分。

 

!!以下ネタバレ含みます、未読の方ご注意ください!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや話したいことはたくさんある。

 

 

 

 

まず結末ですよね。

ここに触れずしては始まらないです。

 

最後にどんでん返すミステリはたくさんあるし、クリスティでびっくり仰天何回も経験済みだしミステリの展開的にはそれなりに慣れてはいる。

(いや逆に犯人気づけず悔しい…、香月・鶴丘、違う名前の印象で惑わされた気が)

 

でもここまで人物の性格がどんでん返す作品ってあるん??

(いうてそこまでミステリに造詣が深いわけじゃないのであるかもしれない)

読んでいて翡翠ちゃんの豹変ぶりに背筋が寒くなりました。

 

そして圧巻なのが最後の場面。謎解きと相場が決まっているミステリの常識を覆すラスト。

 

だって謎解きはそれぞれの章、納得の行く形で終わっていますからね。すでに。

そこに新しい解釈を入れ込んでくるという。

そういう形のラストがあったか…!!と痺れました。ビリビリでした。

 

しかも犯人の自白とか新たな物証が出てきたとかそういうのは一切なく。

物語に出てきた手札だけで、論理的に(これめっちゃ重要!!)もう一つの筋道を作るという神業。

「すべてが、伏線。」*1 本当にそのとおりでした。

つまりは筋の通ったプロット2種類用意してるってことですよね。

そして第2のプロットに必要な物証を、本編にさりげなくちりばめているんですよ。

 

いや~手の上で転がされてるなア~~!!!

 

読み終わったとき快哉しましたね!

裏切られた悔しさを通り越して、もう清々しいことこの上なかったです。

緻密、緻密すぎる。

 

結末と第2のプロットを知ったら読返必至です。

これ書いたら私もすぐさま読み直す所存!!

 

個人的には特にセーラー服の三角タイの話が印象強かったです。

おかしいとも謎とも思われていなかった、そういえば言っていたな程度のものが、謎解きのピースになっていたという衝撃を一番感じました。

翡翠ちゃんのいう、日常に潜むミステリ「日常の謎」<本書文庫版p. 405 ℓ 5>の真骨頂ですよね。

 

そして

翠色のスカーフがふわりと二つ折りの三角形状に広がって、(中略)抵抗の際に暴れたのか、スカーフにはローファーらしき靴跡が残っており、それが事件の痛々しさを香月に連想させる。 <本書文庫版p.225 ℓ 6~10>

読み返すとちゃんと書いてあるんですよ。

地面に落ちてる被害者のタイの折り方、もとい被害状況の説明箇所なんて注意して読んでなかった。(ごめんなさい汗)

逆に読者の注意が散漫になるところ、見透かされてるってことですよね。

恐れ入りました…!!!

 

 

すべて見通した翡翠ちゃんの行動の計算高さにも舌を巻いてしまいました。

どういう行動をしたら香月先生が信じるか、誘導させれるか。

翡翠ちゃん怖い子だ。。。

 

翡翠ちゃんの性格(化けの方)に関しては、この感じ最近どこかで目にしたなと思っていて。

そうだ。

蟹を食うの彩女さん*2だ、と気づきました。

 

男性がいかにも好きそうな女性なんですよね、翡翠ちゃんって。

一挙手一投足が可愛すぎるんです。

読んでいて人物としてイメージがつかみにくいなとも感じました。

 

ベクトルは違えど、風貌といいしぐさといい、翡翠ちゃんも彩女さんも男性の思う理想的な女性を具現化したキャラクターのように思います。

実際のところ、ほぼ男性目線(香月先生目線)の描写ですし。うん。

翡翠ちゃんもこういう役割の子なのかなあと思いきやの、すべては香月先生に近づくための演技だったわけですが。よくよく考えてみれば、距離の詰め方違和感大ありだったな。

前半読んでて似合わないのではと思っていた果耶ちゃん配役、納得いたしました。

 

 

ミステリとしては、ホラーとの融合のような、新感覚を味わえました!

特に前半薄ら寒くて怖かった…!読みながらゾクゾクしてしまいました。

家に水滴落ちてたらどうしようとか、本気で思った。

それにミステリを読んで洗面所が怖くなったのは、小学校低学年のころにルブランの『813』を読んで以来かもです笑

熱~~~い夏に読みたくなる作品です!

 

それでまた後半の謎解きシーンで、いやな寒さが一気に解消するのも乙です。

こちらもある意味怖いのは間違いない。

そういう意味で最終話は、超常現象と人間という、怖さの本質の二大対決を目の当たりにした気分でした。

論理的思考を武器とする推理作家が超常現象に囚われていて、超常現象を扱う霊媒師が霊感がみじんもない論理的思考の使い手だったという、2つの「逆」向きの逆説性にも魅せられましたね。

 

あとは、死にかなり寄り添った作品だなと感じました。

一つひとつの死が丁寧に描かれていたり、死ぬ間際の無念の表現、霊が停滞するという話など、最終的に翡翠ちゃんのデタラメということになってはいますが、真に迫る描写の数々にハッとさせられました。

ミステリではしばしば当然の効果として、象徴として、当たり前のように描かれ消費される死。

この作品で死の重さや残酷さが改めて胸に刻み込まれたとともに、筆者が今までのミステリの在り方に問いかけているように感じました。

 

本当に最後まで面白く、インタールードⅠⅡⅢがどのような形で本編に絡んでくるのかも気になりながら、心霊現象にゾッとしたり、かりそめの翡翠ちゃんと香月先生に微笑ましくなったりと、これぞエンターテインメントな1冊でした。

構成とか、個々の事件とかの感想もたくさんあるのですが、長くなりそうなので今回はこのくらいにしておきます!

読返しつつ、他のキャスト予想でも密かに楽しもうかな!

 

それから『Invert城塚翡翠倒叙集』は読むの確定で、あとは山田風太郎サラ・ウォーターズを読まなきゃですかね!

 

そしてまだ感想文書けてないちびっこたちへ!

夏休みはまだあるぞ!頑張れ!!

(ただ感想文のタイトル、「本の題名 + を読んで」 はどうもよろしくないらしいので注意してね)(説得力皆無)

 

それでは!

*1:本書のキャッチコピー。公式HP(リンク先)ご参照ください

http://kodanshabunko.com/medium/

*2:Gino0808作『雪女と蟹を食う』の登場人物 雪枝彩女 のこと